直流電源で動作する「直流(DC)モーター」について、動作原理や構造を写真や動画を使って詳しく紹介していきます。
「直流(DC)モーター」を動作させるためには直流電源が必要です。
直流電源を得るためには「乾電池」や「バッテリー」等が使用されますが、直流電源は電圧が安定していて変化がありません。
しかし、モーターは電磁石の磁力を利用しているため、回転させるには電圧(+とー)の変化が必要です。
それではなぜ電圧の変化の無い、直流電源でモーターが回転するのでしょう?
身の回りに当たり前のようにある直流モーターですが、いざ動作原理を説明してと言われると、一言で説明するのは難しいのでは無いでしょうか?。
実際に初心者でも扱いやすいマイコンボード「Raspberry Pi Pico」 を使用した直流モーターの使い方についても、以下のリンクで詳しく紹介しています。
1.直流モーターの原型を動画で確認
2.直流モーターとは
3.直流モーターの動作原理
・基本はフレミングの左手の法則
・直流電源から回転力を得る方法
・直流モーターの回転原理
・直流モーターの原型を作ってみよう
・実用的な直流モーターの原理
・実際の直流モーターの構造
4.直流モーターの特徴
5.直流モーターの種類
6.まとめ
1.直流モーターの原型を動画で確認
いきなりですが直流モーターが動作する様子を動画で見てみましょう。
見た目はモーターとは言い難いですが、動作原理や構造は直流モーターそのものです。
学校で作ったことのある方もいるかと思いますが、コイルをぐるぐる巻いたアレです。
これが回転するモーターの基本原理です。どうして回転するのでしょう?
以下から順番に紹介していきますので少しづつ確認してみましょう。
2.直流モーターとは
直流(DC)モーターとは、直流(DC)電源によって回転する力を得ることができる電動機です。
直流電源で動作するため「乾電池」や「バッテリー」で動作するものの駆動源として使用されます。
車の電動部分(ワイパー、パワーウインドウ等)や電動車いす、電動ドリル、ドライヤー、おもちゃ等、身の回りの様々な場所で使われています。
3.直流モーターの動作原理
直流モーターの動作原理を順番に図を多めに紹介していきます。
・基本はフレミングの左手の法則
直流モータの動作を理解するために、まずは誰もが一度は習った「フレミングの左手の法則」について思い出しましょう。
「・・・の法則」と聞くと拒絶反応が出そうですが、下画像のようなものです。
覚え方は「中指から電・磁・力」です。(※一番力の強い親指が「力」と覚えましょう)
左手を上画像のような形にして、「中指が電流」「人差し指が磁力(磁界)」「親指が移動する力(一番力の強い親指が力)」です。
・直流電源から回転力を得る方法
「フレミングの左手の法則」から得られる「移動する力」を回転力として得る方法は以下のようになります。
ぐるぐると巻いたコイルを磁石の間に置いて、コイルに電流を流すと下画像のように回転しようとします。左手を重ねながら見てみましょう。「中指から電・磁・力」です。
[状態1]では巻いたコイルによって、左右で流れる電流の方向が違う2辺ができます。
これによってフレミングの左手の法則によって移動する力が左右で反対向きになり、右回転しようとする力が発生します。
[状態2]ではコイルが磁石から遠くなるため、移動する力も弱くなり、さらに回転とは違う方向に力が働くため回転力は発生しませんが、惰性で回転し続けます。
[状態3]ではコイルが反対になるので巻く方向が反対になって、流れる電流の方向も反対になります。
すると移動する力も反対になるため、左回転しようとする力が発生します。
・・・回転しない?
回転しつづけるには少し工夫が必要です。
次からは回転させる方法を図で説明した後に、冒頭のコイルを巻いて自作した直流モータの原型をもう一度見ながら動きを確認していきましょう。
・直流モーターの回転原理
[状態1]ではフレミングの左手の法則で右回転する力が発生。
[状態2]では回転力は発生しませんが、惰性で回転し続けます。
[状態3]で電流を流すと左回転する力が発生してしまうため、電流はOFFにして惰性で回転させます。
[状態4]も電流はOFFのままにして惰性で回転させることで、また[状態1]に戻って、そこで電流をONすることでまた右回転し続けることができます。
この「仕組み」は実際に直流モーターの原型を作って動かしてみるとわかりやすいので、次からは冒頭の動画で紹介したモーターの原型を見ながら確認してみましょう。
・直流モーターの原型を作ってみよう
実際に直流モーターの原型を作ったものは下写真のようになります。
真ん中に銅線を巻いたコイルがあって、左右の電源+ーの電極の上に乗っています。
コイルは電極に乗っているだけなのでクルクルと回ることができます。
コイルは全体が絶縁コーティングされているので、電流を流すために電極に触れる部分は絶縁を剝がしておく必要があります。
電源+側は半分だけ絶縁を剥がします。
電源ー側は全周絶縁を剥がします。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、コイルをひっくり返すと電源+側の半分は絶縁を残しています。
冒頭で紹介した動画と同じですが、実際にどのように動作するかもう一度見てみましょう。
巻いたコイルに電流を流して磁石を置くと、モーターとして回転させることができます。
これがモーター回転の基本原理になります。
実際にはあれこれ工夫されて、もっと効率よく回転するようにして実用的なモーターになります。
・実用的な直流モーターの原理
巻いたコイルで直流モーターの動作原理を説明してきましたが、このままでは回転軸の両端に電圧を与える必要があり、回転軸にギヤ等を取り付けることができません。
このためもうひと工夫加えて下画像のように改良します。
[状態1]ではコイルに電流を流す「ブラシ」がコイルと触れているため、コイルに電流が流れて「フレミングの左手の法則」で右回転する力が発生します。
[状態2]でコイルが垂直になるとコイルとブラシが離れてコイルに電流が流れなくなるため回転力は発生しませんが、コイルは惰性で回転し続けます。
[状態3]ではコイルが反転して、ブラシとコイルが接触し電流が流れますが、電流の流れる方向は[状態1]と同じため、また右方向の回転力が発生します。
[状態4]でも[状態2]と同様に回転力は発生しませんが惰性で回転し続けて[状態1]に戻りコイルは回転し続けます。
・実際の直流モーターの構造
実際の直流モーターの構造はもっと複雑ですが基本は同じです。
今回紹介した、コイルが1巻きの場合では回転位置の180°ごとにしか回転力が発生しませんが、これでは安定した回転力が得られず実用的ではないため、実際は下画像のように角度をずらしてコイルが複数組巻いてあります。
4.直流モーターの特徴
直流モーターの主な特徴は以下のようになります。
①直流電源で動作するため、電池やバッテリー等で駆動できる。
②回転数が電圧で決まり、その変化は直線的なため速度制御が簡単。
③低回転でも大きなトルクが得られる。
直流モーターのトルク(回転する力)、回転数、電流の特性は以下グラフのようになります。
5.直流モーターの種類
直流モーターにもたくさん種類があり、主に以下の2種類で②はさらに分類されます。
①永久磁石界磁型直流モーター(ここで紹介した永久磁石のあるモーター)
②電磁石界磁型直流モーター(永久磁石は無くて電磁石を利用したモーター)
①は今回ここで動作原理を紹介するために使用した永久磁石を使用した直流モーターで、最もよく使用されます。
②は永久磁石ではなく電磁石(電流を流すと磁石になる)を利用したもので、さらに以下のように分類されます。
1.直巻モータ
2.分巻モータ
3.他励磁モータ
これら3つのモータの内部回路は以下のようになっています。
直巻モータ
分巻モータ
他励磁モータ
「直巻モータ」と「分巻モータ」はブラシへの電源ラインと電磁石の電源ラインが同じため、+と-を入れ替えても回転方向は変わりません。(一方向にしか回転させたくない用途で使用されます。)
「他励磁モーター」はブラシへの電源と電磁石の電源が別のため、配線は4本あります。
「ブラシへの+ーの入れ替え」でも「電磁石の+ーの入れ替え」でも回転方向を変えられます。
電磁石への電圧を調整することででも回転数やトルクを制御することもできます。
6.まとめ
直流(DC)モーターの動作原理を図を交えて順番に紹介しました。
直流モーターの動作原理を理解するためには、どうしても「フレミングの左手の法則」が必要です。
「・・・の法則」と聞くと拒絶反応のある方もいると思いますが、覚え方は「左手の中指から電・磁・力」です。
これだけわかれば、あとは図と照らし合わせることで回転原理の理解がしやすくなると思います。
直流モーターの動作原理がわかると他のモーターの動作原理も理解しやすくなるので、図や動画を見ながら順番に確認して、イメージだけでもつかんでおきましょう。
実際に直流モーターの動作確認をするには模型用のモーターを乾電池に繋ぐだけで動作確認できます。
さらに正逆転や速度制御を行うことも、マイコンボードを使用して簡単なプログラムで動作確認することができます。
初心者でも比較的簡単にプログラミングを体験できるマイコンボード「Raspberry Pi Pico」を使用した、DCモーターの使い方も以下リンクで紹介していますので、興味を持たれた方はぜひ確認して体験してみてください。
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